ブログ。

catch-img

物流施策2025、外国人トラックドライバーも視野に。

今年は、総合物流施策大綱刷新の年です。
先般、パブリックコメントが終了し、「総合物流施策大綱(2021~2025)」が正式に閣議決定されました。端的に、「物流DX2025」と表現したほうがわかりやすいかもしれません。内容もそうです。いまや、ITやデジタル化なしに、どんな施策もつくれないと思います。

今回、この大綱の経緯、および中身から、目についたトピックを取り上げてみます。


物流施策大綱とは?

3月に公表された「事業用自動車総合安全プラン2025」と同じく2021~2025期間、5年もの、の政策です。
大綱は、安全コンセプトではなく、物流ビジネス、物流業界そのものの方向性を指し示すものです。
そして、物流とは、自動車運送事業だけではなく、航空、鉄道、船舶、国内外、全般にわたるもので、安全プラン2025よりもずっと広い概念でとらえるべき内容であります。

だいたい5年ごとに改定・刷新されています。

総合物流施策大綱(1997-2001)
総合物流施策大綱(2001-2005)
総合物流施策大綱(2005-2009)
総合物流施策大綱(2009-2013)
総合物流施策大綱(2013-2017)
総合物流施策大綱(2017-2020)


パブリックコメント、たった一週間、たった3件。

 

5月25日、募集期間はたった一週間。
緊急以外ではあまりない、異例の短期間パブリックコメント公示です。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&bMode=1&bScreen=Pcm1040&id=155210106

5年という潮流を視野にいれた「大綱」であるにもかかわらず、さすがに7日間という短い期間であり、意見提出にいたった方は少なかったようです。

3件でした。





総合物流施策大綱(2021-2025)



「大綱」というだけあって重要な基本方針です。
40Pもありますが、ひとつひとつが重要な施策であり、どれもこれも、みなさんの将来の事業運営に関連することばかりです。




2022年の国交省予算も、2023年の国交省予算も、その次も、この大綱がベースとなって決められてゆきます。

 

 

日本の未来、物流の未来

現在の社会情勢と今後の変化、国家戦略としてど物流業界をどうしてゆくのか?
厳しい現実を直視しようという姿勢と、これを乗り越えるため前へ進もうという意思も随所に見られます。


「我が国の総人口は2008 年をピークに減少局面に入っており、2050 年には約1億人にまで減少する見通しである。
人口減少を年齢階層別に見ると、2015 年から2050 年にかけて、生産年齢人口は約2,400 万人、若年人口は約520 万人減少し、その結果、高齢化率は約27%から約38%へ上昇すると見込まれている。」

 

 

「高度経済成長期に集中的に整備された道路、港湾等のインフラについて、2033 年における建設後50 年以上経過する施設数の割合は、2018 年時点比で約2~6倍増と見込まれる」

 

 

「令和2年第203 回国会(臨時会)の総理大臣所信表明演説において、「2050 年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことが表明された。
さらに、2021 年4月には、2030 年度に温室効果ガス排出量を2013 年度比で46%削減することを目指し、更に50%の高みに向けて挑戦を続けていくことを表明するなど、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け、更なる取組の強化が求められている」

 

 

「将来予測として、需要に対し20 万人超の規模でトラックドライバーが不足するという調査結果もある中、今後、物流事業者は時間外労働の削減など労働環境の改善について実効性のある対策を加速させる必要がある」

 

 

日系企業の海外展開に伴い、物流企業の海外進出も進んでおり、2018 年の物流企業の現地法人数は、2004 年比で台湾・香港・中国が約3倍、ASEAN は約4倍となっている

国際競争力の一層の強化のため、我が国物流企業の海外展開を更に後押しすることが重要である」


 

「労働力不足は各産業共通の課題となっている。我が国の物流産業は、その労働就業者数が約258 万人であり、全産業就業者数(約6,681 万人)の
4%
を占める一大産業であるが、その大宗を占めるトラック運送事業に従事するトラックドライ
バーは、全産業と比べて労働時間が長い一方で、年間所得額が低い状態が続いている」

  

「2018 年6月に働き方改革関連法2が成立し、2024年度からトラックドライバーに対して、
時間外労働の上限規制が罰則付きで適用されることとなった。
将来予測として、需要に対し20 万人超の規模でトラックドライバーが不足するという調査結果もある」

 

「日系企業の海外展開に伴い、物流企業の海外進出も進んでおり、2018 年の物流企業の現地法人数は、2004 年比で台湾・香港・中国が約3倍、ASEAN は約4倍となっている。
国際競争力の一層の強化のため、我が国物流企業の海外展開を更に後押しすることが重要である

 

 

我が国の農林水産物・食品の輸出拡大は、持続的な経済成長や地域経済の活性化等に資する方策として重要となりつつある。輸出額は2020 年に9,217 億円であり、8 年連続で過去最高を更新し、アジアへの輸出額が全体の75%を占めている。今後、この輸出額を2030 年までに5兆円とする政府目標に向け、それを支える物流基盤の整備など積極的な取組が求められる

 

 

「ドローン物流については、離島や山間部、過疎地域における荷物配送や災害時の物資輸送など、
地域における社会問題の解決も見据え、2018 年度以降、実証事業の実施を含め国による実用化に
向けた支援が実施されている。

また、自動運転については、高速道路でのトラック隊列走行技術の実証実験を実施してきたところであるが、2021 年2月には新東名高速道路の一部区間において後続車の運転席を実際に無人とした状態でのトラックの後続車無人隊列走行技術を実現した

 

 

なぜ、ドライバー不足なのに、賃金が上がらないのか?


物流業の労働生産性:
2015 年度 2,496 円/時


2018 年度 2,569 円/時
(参考6:全産業(2018 年度) 3,695 円/時)

労働生産性の向上のためには、物流事業者の売上高や物流従事者の賃金の増加、労働時間の削減等が必要であるところ、前大綱下において関連する取組が推進され、その成果が少しずつ出てきてはいるものの、物流産業の労働生産性は依然として全産業には遠く及ばない水準にとどまっている。


 

 

・トラックの積載効率
2016 年度 39.9% → 2019 年度 37.7%

時間指定やリードタイムの短い貨物が多いことに加え、共同輸配送やゆとりあるリードタイムの設定などの積載効率向上に向けた取組に対する荷主の理解を得ることが難しい等の事情から、トラックの積載効率は低迷している。


 

一方、トラックドライバーの有効求人倍率に着目すると、以下のような現状となっており、全産
業と比しても労働力不足の度合いが高いことがわかる。これは、トラック運送業は依然として他
産業よりも労働時間が約2割長い一方、年間賃金は約1~2割低く、職業としての魅力が他産業
と比して低いことが一因である
と考えられる。トラックドライバー以外にも、休日がない連続労
働等により月間の総労働時間が長い傾向にある内航貨物船員や、倉庫における荷役作業等を行う
人員についても、労働力確保が課題となっている。

・有効求人倍率
貨物自動車運転手:2015 年度 1.72 倍 → 2020 年度 1.94 倍
(参考) 全産業:2015 年度 1.11 倍 → 2020 年度 1.01 倍

 

 

方向性。

 

「新しい生活様式への対応には、まず非接触・非対面型の物流への転換が喫緊に求められる。今なお物流の現場では、書面手続や対人・対面に拠るプロセスが多いが、デジタル化による作業プロセスの簡素化や汎用化は、非接触・非対面型物流の構築に必須の施策である。」

 

「これまで個人の経験や既存の商慣習・様式に依存してきた物流業界において、デジタル技術を駆使して様々なデータを可視化し、関係主体が対人・対面によらずとも即時にそれを共有可能とすることは、作業プロセスの汎用化等を通じた多様な担い手の確保や、検品レスをはじめとしたプロセスの大幅な合理化を促すきっかけともなり得る」

 


「こうしたDX の推進のためには、その前提として各種要素の標準化が必要である。これまでは様々な商慣習等のため、物流の標準化は進捗を得られない面もあったが、物流に対する関係者の危機感が増すにつれ、様々な業界で具体的な取組が進みつつあり、全体的な機運も高まっている。デジタル技術の社会実装が急速に進みつつある中、我が国の物流のあらゆる局面において、時機を逸せず集中的に物流産業におけるDX と標準化が推進されるべき時期に来ているといえる」


 

 以上のごとく、前回の大綱を総括し、現状認識をあらめた上でかかげられたのが・・・以下の3つです。


①簡素で滑らかな物流

物流DX や物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化

② 担い手にやさしい物流

労働力不足対策と物流構造改革の推進

③強くてしなやかな物流

強靱で持続可能な物流ネットワークの構築


この3つを、実現する! とのこと。


物流DXを、国が定義した件。


「物流DX や物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化~簡素でなめらかな物流~」

本大綱は、「物流DX」を、正式に、以下のような定義とし、施策の①番目に置きました。閣議決定される施策パッケージですので、実質、国家戦略としての「物流DX」です。


機械化やデジタル化を通じて既存のオペレーションを改善し、働き方の改革につなげることにより、経験やスキルの有無だけには頼らない、ムリ・ムラ・ムダがなく円滑に流れる物流、すなわち「簡素で滑らかな物流」の実現を目指す。また、物流の機械化・デジタル化は、輸送情報やコストなどを「見える化」することを通じて、荷主等の提示する条件に従うだけの非効率な物
流を改善するとともに、物流システムを規格化することにより収益力・競争力の向上が図られるなど、物流産業のビジネスモデルそのものを革新させていくものである。

こうした取組によりこれまでの物流のあり方を変革する取組を「物流DX」と総称する。

これにより他産業に対する物流の優位性が高まるとともに、我が国産業の国際競争力の強化にもつながるものと考えられる。また、物流の現場で働く労働者のスキルやサービス水準が高い我が国は、物流DX を円滑に進めやすい環境にあると考えるべきである。」



AI等を搭載した点呼機器の認定制度の件

具体的に、3つ、物流DXの個別施策が掲げられています。

① 手続書面の電子化の徹底

② サプライチェーン全体の最適化を見据えたデジタル化

③ デジタル化を前提とした規制緩和や手続の特例の検討


ここの、③に、事業用自動車総合安全プラン2025や、令和3年度予算でも話題になった「AI等を搭載した点呼機器の認定制度」、出てきました。

デジタル化の推進により、特殊車両が即時にウェブ上で確認した通行可能経路を通行できる新たな通行制度により、特殊車両の通行手続の迅速化を図るほか、事業用自動車の運転者に対して乗務の前後に実施する点呼について、AI 等を搭載した点呼機器の認定制度を構築し、認定を受けた機器を使用した場合は、非対面の点呼が行えるようにするなど、デジタル化に資する取組について規制緩和や手続の特例を検討する」




中小企業支援策


中小企業における自動化・機械化を促すための方策として、以下が予定されています。


中小の倉庫事業者や運送事業者などでは、コスト負担などから、事前に明確なメリットが確認されない限り、自動化・機械化に躊躇することも想定される。このため、中小事業者による物流DXの先進的取組やその効果等を整理した事例を公表するとともに、物流効率化の観点から特に秀でた取組を表彰するほか、機械導入等の設備資金に活用可能な金融支援策の利用を促進するなど、中小事業者の取組を促進するための方策を検討する。

 

多様な労働力に、「外国人ドライバー」は含まれるか?


物流のサービス水準維持のためには、新たな労働力の確保という観点も重要である。働き方の改善により、若年層を含む担い手の確保に最大限努めるほか、デジタル機器などを駆使し、業務内容を簡素化・汎用化することで、多様な労働力の確保に努めるべきである
こうした労働力確保や輸配送の効率化を図りつつ、離島や山間部など物流需要の少ない地域における物流網の維持にも留意すべきであり、官民のみならず住民も巻き込んだ取組も求められる。
物流が社会において見直される中、こうした取組によりその担い手がゆとりを持って働ける魅力
的な産業に変貌することで、「担い手にやさしい物流」が実現するものと考える。



物流業界においては、既に庫内作業等の一部をアルバイトとして採用された留学生などの外国人が担っているが、物流業界におけるダイバーシティの確保等の観点も踏まえ、トラックドライバー等への外国人の活用についても今後議論を進めていくほか、空港における航空貨物取扱業務への特定技能外国人の活用について推進する。


こうした多様な人材の確保・育成に当たっては、経験やスキル等を重視した労働慣行だけに頼
らない業務のあり方の検討も重要であり、物流DX の推進により、AI やIoT 等新技術を活用するこ
とで、オペレーションの定型化や標準化を進める。



その他、物流Maas、ラストワンマイル、貨客混載ほか、いろいろな施策が掲げられていますが、ほぼ、過去5年の継続案件ですので、省略します。


KPI、ハンパじゃない目標数値


実現すべきKPIが、別表で数値化されています。ようくご覧ください。

 




「物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けた取組に着手している物流事業者の割合

→2025年 100%



自動化、機械化、しなやか、滑らか、やさしい、とは、もはや、日本人以外の労働者を想定したものとなってゆくのでしょう。