ブログ。

catch-img

『これが人口増加率日本一で、秋葉原から電車で僅か45分の25万人地方都市の現状です』。つくば 25万人都市の交通は崩壊している?

今回は、2024年3月11日の規制改革推進会議 地域活性化ワーキンググループ より、つくば市 市長のビデオメッセージです。

 

21分58秒からです。

 

 

 

○つくば市(五十嵐市長) つくば市長の五十嵐です。本日はこのような機会をいただきましてありがとうございます。ライドシェアワーキングに向けて、つくば市の現状と今後のあるべき姿についてのお話をさせていきたいと思います。つくば市の人口は25万人、昨年は全ての市の中で人口増加率が日本一となりました。
そのような状況でも、ドライバーの不足は危機的な状況です。地域の路線バスは市のコミュニティーバスと民間路線バスのどちらも2024問題の影響が非常に大きく、特にコミュニティーバスでは4月から大幅な減便と運行時間の繰上げを余儀なくされています。平日は13.6%減、土日・祝日は32.8%減、3分の1が減るということです。
タクシー事業者が運行している、主に高齢者中心に利用されている市が行うデマンド型交通も、ドライバー不足で事業自体の継続性が危ぶまれています。観光客の足も足りていません。つくばエクスプレスつくば駅と筑波山を結ぶ民間路線の直通バスは1時間に1本となってしまいました。これでは筑波山の観光キャンペーンを打てないと事業者にはっきりと言われてしまいました。

タクシーはどうでしょうか。市内のタクシー協同組合によれば、現状では、基本つくば駅には常時30台ほどのタクシーがプールされることになっています。ただ、つくばエクスプレスで仕事に来ても、朝9時に市内の研究機関や事業所に行くためのタクシーがなく、クレームが入るということでした。駅に戻る途中で配車アプリからの予約があると、その迎車を優先することから、タクシープールに帰社していないという現状があります。

これは夜も同様です。若い世代などが繁華街で飲んでいて、タクシーを利用しようと近くのタクシーの営業所で待っていても、タクシーが戻ってこない状況があります。駅のプールもタクシーが一台もおらず、空になることが多い状況です。私自身、先週末も見てきましたが、そのような状況が見られました。

市内では、高齢化が進む地域とつくばエクスプレスの駅周辺の人口集積が進む地域との二極化が顕著です。高齢者の移動も深刻です。市内には福祉有償運送を行っている事業者がありますが、対象に介護や障害の要件があり、利用者は市役所でその要件の確認をしなくては利用できず、結果として極めて限定的な利用となっています。車両台数が確保できないと、日中の病院への移動といった高齢者の高いニーズに応えることができず、タクシーの運賃助成券の配布といった施策にも限度があります。


先週、先ほどお話ししたタクシー協同組合の代表と話をしました。この代表は別事業もやっていますけれども、タクシー会社は数年前に廃業をしました。今も組合の代表は続けているわけですが、黒字だったタクシー会社をなぜ廃業にしたのか聞いてみると、ドライバーが高齢者ばかりだと。集めるのが大変だと。そして、高齢者ドライバーが増えているので、大きな事故を起こすリスクを考えれば、続けるのは無理だと判断したと言っていました。若い人の確保ができないのか聞いてみました。二種免許を取ってタクシーの運転手になろうなんていう若いのはいなくなっているから無理なのだと言っていました。
これが人口増加率日本一で、秋葉原から電車で僅か45分の25万人地方都市の現状です。

高齢者の日中移動も、仕事のための移動も、繁華街からの移動も、現役世代の移動も、観光客のための移動も、全てに制限がかかっている状況です。市としても手をこまねいて見ているわけではありません。地方創生臨時交付金を活用するなど、あるいは直接税金を投入して公共交通事業者への補助を行ってきましたが、運転手の高齢化に歯止めはかかりません。運転手の雇用も増えません。できるだけのことをしても、何とか現状維持がやっとです。
移動課題の根本であるドライバーの確保については、いないものはいないという結論となり、金額の問題ではありません。このような状況で移動の自由という根源的な権利は担保されるのでしょうか。

昨年12月の規制緩和方針は、これまでの状況を考えれば大きな一歩であり、皆様の御尽力に感謝をしています。ただ、懸念点があります。運営主体がタクシーだけであれば、先ほどの組合の代表の話のように、ドライバーの高齢化に伴いタクシー会社自体の経営が困難になり、廃業が進む中、今後の見通しは暗いと言わざるを得ません。事業者をもっとオープンにすべきと考えます。

台数制限についても懸念があります。タクシー会社が保有しているタクシーには限りがあります。今後、ドライバーが減り、タクシーの保有台数も減っていくことを考えれば、制限の合理性にも疑義があります。タクシーの営業区域ごとに金曜日夜や時間を限っての自家用車走行が許される想定ですが、これは23区などの人口密度が極めて高い地域では成立すると思いますが、つくばを含めてほとんど全ての都市では、このような要件がかかっては事業性で参入が厳しいと考えます。タクシーの営業区域にとらわれない事業としても、安定する制度設計が必要です。

移動ができないということのリスクを再度述べさせていただきます。病院など、市民が必要なサービスを受けられないことで健康状態にも影響していきます。地域経済への影響も深刻で、タクシーがつかまらなければ地域の飲食店にとっても大きな損失の機会となります。つくば市内でも周辺部から中心部への引っ越しが発生しています。移動が不便で、買い物や病院のために住み慣れた地域を離れてでも便利なところに引っ越さなくてはいけない状況があり、そうやって歴史ある地域が持続性を失っていってしまいます。未来の話をしているのではありません。2024年、国からスーパーシティー型特区にも選ばれたつくば市の現在の問題です。

ある交通事業者の経営者は、地域の交通は既に崩壊していると。「既に」と言っていました。現状を直視しなくてはいけません。既存の法律の規制緩和だけで対応できることには限界があります。今般の国の議論において、過疎地前提に2号、大都市前提に3号の議論をされていると認識をしています。しかし、今、申し上げたつくばの状況からは、つくば市の規模においても2号が対象としているエリアと3号が対象としているエリアが混在しています。

そのことを考えれば、今後の議論において、3号関係もさることながら、2号も含めて総合的な議論が必要です。少しほころびが出ている程度であれば、応急処置をしながらでも可能かもしれません。しかし、現状は少しのほころびではありません。仮にまだ崩壊まではしていないとしても、崩壊直前であることは間違いありません。パッチワークではもう対応ができないのです。だからライドシェア新法が必要だと私は強く考えています。

時代の現実に合った制度を根本からつくる。これまではそのようなことはできませんでしたが、今はテクノロジーの力でそれが可能になっています。需要に応じた対応、ダイナミックプライシング、適切な配車がスムーズにできるのは御案内のとおりです。道路運送法ができた昭和26年には、そのようなテクノロジーはありませんでした。新法により柔軟な働き方、結果としての所得の向上、税収のアップ、そのことによるサービスの向上、市民の健康、そして持続可能な地域へとつながっていく。そう考えています。

逆に、自由で柔軟な働き方を進めなければ、ドライバーは集まりません。タクシー組合の代表が言った、二種免許をわざわざ取ろうとするような若い人はいなくなっているという現実を受け止めるときです。もちろん安全管理は重要です。私は警察庁での有識者会議の委員も務めさせてもらい、様々な緩和が進み、モビリティーの遠隔監視も認められることになりました。そのような仕組みを援用することは可能です。ドライバーの資格要件など、詰めていくべき内容はもちろんあります。政府はデジタル田園都市国家構想を掲げています。科学技術を使って国民を幸せにすることが国を挙げて目指されています。ライドシェア新法は、その大きな一歩になると確信をしています。

最後に、自戒を込めて申し上げます。落としどころの議論をやめましょう。この業界にいると、落としどころの議論をすることに慣れてしまっています。しかし、交通の問題は、落としどころを探して現在の問題に直面せずにやり過ごしていたら、地方は完全に崩壊してしまいます。問題に正面から向き合うために、現代に合った新法をつくる動きを今こそ始めるときだと考えていますし、そのために、地方自治体の長として私もできる限りのことは何でもやっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

3月11日 議事録より
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/240311/local09_minutes.pdf

つくば市地域公共交通活性化協議会

https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/toshikeikakubusogokotsuseisakuka/gyomuannai/2/2/19372.html

現状はR7年までの計画。

https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/126/tukubasitiikikoukyoukoutuukeikakukaiseiban.pdf

次期計画は、ライドシェア前提となるのではないでしょうか。