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貸切バスの「安全性評価認定制度2025版」は、運輸業界全体の未来の姿か? トラックのGマーク制度改正にも影響を与えるか?

あ。あたらしいマークだ。カッコイイですね。

来年から評価制度が変更されます。

なぜ、変更? 何がかわる? なぜ、今?

報道資料によれば

① 運行管理などについての審査基準の厳格化
② 健康管理、先進安全自動車など安全に対する高度な取組への評価
③ 点呼の録画やディジタル式運行記録計の義務化など規則等の改正への対応
④ 評価認定マークの変更及び三ツ星を五ツ星に変更するなど認定種別の変更

が目的とのこと。

①の運行管理審査の厳格化は、鹿児島で8月に起きた31人の貸切バス事故をうけてのことかもしれません。まるで軽井沢スキーツアーバスと同じような事故の写真は衝撃でした。また、この事故を起こした貸切バス会社の、過去の行政処分履歴が大きく報道されたことも 今回「厳格化」の理由かもしれません。

②は、健康起因事故の推移から、また、ASVの導入率を鑑みての事かと思います。

③は、「貸切バスにとってのもうひとつの2024年問題」といっていいかもしれません。来年4月からのデジタルタコグラフ・デジタル点呼データ 義務づけ 、これに向けて審査が変わってくるのは当然かと思います。



日本バス協会の報道資料から、もうすこし見ていきましょう。

運行管理などについて審査の厳格化

2つの厳格化があるようです。

まず、「行政処分に関する減点の強化」

[行政処分の状況の評価](10点)
 国土交通省から提供された過去2年間(2021年4月1日から2023年3月31日までの間)における行
政処分の累積違反点数の実績を用います。具体的には、10点から累積違反点数を差し引いたもの
が点数となります(累積違反点数が10点以上の場合は全て0点になります)。
 また、11ページ「4.降格等(1)」に該当する場合は0点となります。
 なお、2022年4月1日から2023年3月31日までの間、1営業所1回当たり50日車を超える行政処分を
受けている場合は、申請条件を満たさないため、評価・認定を受けることができません。

現行制度は、行政処分は10点満点で、行政処分の累積違反点数を「差し引く」というもの。
今般改正される「減点の強化」とは、この差し引く点数を多くする、つまり10点に届きにくくする、という意味の厳格化のようです。どういう減点となるかは、申請要項が公表されるまでは明らかではありません。

もうひとつは、

・法令遵守に対する厳格化(法令遵守に対する配点を全面的見直し)

法令遵守に対する厳格化か・・・。
以下、安全性に対する取組の、法令遵守事項と、上位事項 部分です。

健康管理、先進安全自動車など安全に対する高度な取組への評価

○人為的ミスによる事故防止への取組。

ヒューマンエラーを車両で防ぐ、と。安全武装する事業者をより高い評点で、という考えが色濃くなるようです。

「安全性能が高い車両の導入推進のため、衝突被害軽減ブレーキに加え、ドライバー異常時対応システム等国土交通省補助対象となっている先進安全自動車(ASV)の装置に評価対象を拡大」

なるほど。ASV積極投資の評点を高くするわけですね。

9月の 軽井沢スキーバス事故対策フォローアップ会議で 報告されていたASVの導入状況によれば、61%程度だという。

確かに、ASVの導入率は徐々に高まってきてはいますが、もっともっと高くていいと思う。

各種ASVは、補助制度もあるわけですから、今回の制度変更によって、もっとASV実装が進むかも知れませんね。

 

ちなみに、今日時点の令和5年 ASV助成は、まだまだ余っています。

でもなあ、対象が新車だけなんですよね・・。コレ変えた方がいいんじゃないかなぁ・・・。

○健康起因による事故防止への取組

・運転者の健康管理を強化するため、従前の「睡眠時無呼吸症候群対策」「脳血管疾患対策」に加え、「心臓疾患・大血管疾患対策」、「視野障害対策」を評価対象とし、国土交通省のガイドライン等に基づき規程等を作成し、計画的に検査を実施している事業者について高く評価

とあります。

健康管理体制がしっかしていればいるほど、「上位項目」の配点が高くなる、的な変更でしょうか。

○教育・訓練強化による事故防止への取組

通常の走行訓練に加え、山岳道路、雪山等における走行に特化した研修や訓練を実施している事業者を
高く評価

これも「上位項目」の配点変更と思われます。

規則等改正への対応

○運輸規則改正への対応等

貸切バス業界では、来年4月から、点呼や酒気帯び確認結果の保存方法がデジタル化(義務)となります

・点呼の録画やディジタル式運行記録計等の義務化をはじめ、改正される運輸規則に基づき審査を実施し、遵守されていない場合は不認定とする
・検知データ保存が可能等の高性能アルコール検知器の導入について高く評価

このあたりの変更が予定されています。

因みに、現行はこうです。

アルコール検知器は、記録紙方式、データ方式、簡易式等で、点数の差があります。

ここらへんの「何が法令遵守(規則どおりは当たり前)で、何が上位事項(任意だけど高度なこと)なのか」の配点は、変更がありそうです。

○改善基準告示への対応

・改正される改善基準告示よりも厳しい労務規程を設けている事業者を高く評価
・改正される改善基準告示に対応し、遵守されているか厳しく審査し、対応できていない場合は不認定とする

具体的な詳細については、別途お知らせします、とのこと。

厳しくなった、と言うべきか? 当然、と言うべきなのか?

おそらく2024年2月に公表される申請案内書で変更点がすべてはっきりするでしょう。

これは、現行版2023年度の制度です。

 

貸切バス業界では、この10年、安全性評価制度が出来たり、大きな事故が起きたことで「事業許可制」が始まったり、ドライブレコーダーが義務化されるなど、求められる安全管理体制が大きく変わってきました。

それでもまだ、「安全性」が不十分なのだと、今回の変更は言っています。

今回の変更をどう捉えるべきか、個人的には戸惑います。

貸切バスだけが極端に厳しい措置がとられているように見えます。

よくいえば、貸切バスの運輸規則や安全関連規則は、トラック、タクシー、乗合バスの安全管理のロールモデルとなるべく先頭を走っている、とも言えます。

悪くいえば、「旅客だから」という、誰も反論できない大きな大義・正義によって、本当はトラック業界の方が多くの事故死者を出しているのにもかかわらず、極端に厳しい規制が課せられているようにも写ります。不公平といっては言い過ぎでしょうか。

では、不公平では無い状態にするには、どうするか・・?

今回の安全性評価認定制度の変更は、もしかしたら、トラック業界のGマーク制度の変更や刷新ロードマップににも影響を与えるかもしれません。

Gマークも、近いうちに変更があるやもしれません。

いや、その前に、貸切バス同様、デジタルタコグラフ使用義務・点呼データ保存義務、が先かもしれません。貸切バスのように。