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経済安保と運輸業界。名古屋港コンテナターミナルのシステム障害とパブリックコメントのタイミング、偶然か必然か。

運輸業界にも、ジワリと経済安保法制の影響が・・という話です。

令和4年5月 経済安全保障推進法

 

令和4年5月11日に成立し、5月18日に公布された 法律です。


 

何のための法律・・?

・国際情勢の複雑化(実質、米中分断、ウクライナ、グローバルサウス、防衛費増時代を指しているかと)
・社会経済構造の変化等(実質、人口減少、サプライチェーンの脆弱さ、デジタル化をさしているかと)

このような時代において、安全保障を確保するためには、

「経済活動に関して⾏われる国家及び国⺠の安全を害する⾏為」

を未然に防⽌する重要性が増⼤している・・とのことで出来た法律でございます。

なんか大げさだな・・と思うかもしれませんが、この法律は全省庁にわたり、特定重要物資の指定、まもるべき基幹インフラの指定、流出させない技術の指定等を規定するものであり、案外みなさんの身近な商品やシステムも対象になるかもしれません。

国土交通政策と、経済安保、パブコメ開始

去る6月、このようなパブリックコメントが公表されました。

経済安保推進法を受けて、国土交通省として 具体的にどういう省令規則で対応してゆくかが明らかになりました。関連してくるのは、

 ・鉄道
 ・航空
 ・船舶
 ・自動車(旅客・貨物)

これら事業者のみなさまです。

今般のパブリックコメントでは、「特定重要設備」と「特定社会基盤事業者」の指定について注目です。たとえば、設備とは、実質、ITシステム・デジタル設備を意味しています。
貨物事業者に対しては、こんなシステムを・・・


次に掲げる機能の全てを有する情報処理システム
・配車計画の作成及び当該計画に基づく配車並びに運行計画の作成を行う機能
・事業用自動車の現在地及び配達に係る状況を確認するための機能
・運行指示書の作成を行う機能
・運賃及び料金の算定及び請求を行う機能

貨物以外では、新幹線の運行指令システムや制御システム、航空の運航管理システム、的なものでしょうか。

このようなシステムは実質、政府の監視化にあり、勝手にシステムの調達や運用を「とある外資系IT企業」に委託できないようになります。審査が必要になるようです。
まさに経済安全保障。民間企業の自由取引に、政府が介入することを許容する法律なのです。

また、誰もがご存じの「特別積み合わせ」大手事業者は、「特定社会基盤事業者」に指定される可能性が高いです。

パブリックコメントは6月15日から7月15日のあいだで募集されました。

7月4日 名古屋港で 事件が

折しもパブリックコメントが行われている最中のことでした。愛知県で大きなシステム障害が発生。

名古屋港にサイバー攻撃? ランサムウエアの被害とは?(出典 NHK 名古屋放送局7月5日)

記事内に、国土交通省のコメントが。

「国土交通省によると、サイバー攻撃によって国内の港湾施設の運営がストップするという事例は今回が初めてとみられるという」

7月31日 国土交通省 緊急会合

サイバーセキュリティ政策及び経済安全保障政策における港湾の位置付け等の整理・検討を行うため、「コンテナターミナルにおける情報セキュリティ対策等検討委員会」を設置いたします。

どうやら「港湾」関連施設・関連システムは、特定重要設備には入らない予定だったようですが、7月4日の事案をきっかけに対象に加えられる模様です。

8月9日 パブリックコメント結果公表

特に名古屋のことでコメントをした人はいなかったようです。

それにしても、パブリックコメントの真っ最中に、まさにドンピシャな事件が起きるという・・。
ただの偶然だと思いますが、重要なインフラとも言えるシステムが脆弱さを持っている場合はこうなるという、必然の事案だという気もします。

「国土交通省関係経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律
に基づく特定社会基盤事業者等に関する省令案」

分断の時代とでもいいましょうか。グローバル化の逆流、経済ブロック化を ジワリ と感じる いやな規則ですね。不穏・・。

また、結局デジタル化による労働生産性向上も、保安のためにこのような余計な審査制度ができあがってしまうのでは、プラマイゼロのように感じます。

経済安全保障。なんて不穏で残念な時代のキーワードなんだ。