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R126 とは? 国道126号でしょ。 いえいえアルコール検知器の国際標準規格番号です。

  



 


アルコール検知器、国よって精度はバラバラか?



当たり前かもしれませんが、アルコール検知器は、世界中にあります。
残念ながら飲酒運転をするひとは世界中にいるのであります。
そして、各国には飲酒運転をするひとを捕まえ、罰するひとがいます(警察行政、法務)。

さて、アルコール検知器は、歴史的かつ伝統的に、飲酒運転を取り締まる・罰する際に使われるものとして発展してきました。飲酒運転の度合いを客観的に数値化しないと、「オレは飲んでない」「オレは酔っていない」「酔いは覚めている」と言い張るひとが必ず出てくるからです。

各国では、路上で検問するときに使うカンタンなスクリーニング機器(ニオイチェックレベル)とは別に、「最終判定」で使用するアルコール検知器の規格を国内規格で定めることが多いようです。

そりゃそうですよね。仮にも「検知器」「検査機器」ですから、精度や性能の標準・基準の考えがないとタイヘンです。「その機器は正しいのか! このオレを逮捕できるほど正確なのか!」と言われて、検問の現場や交通裁判で「さあ?」では済まないでしょうから・・。

また、単純に、警察が判定用のアルコール検知器を調達する際、「仕様書」や「技術規格」「同等品」等、目安を示さないと、メーカーや納入業者等応札する側もタイヘンです。「飲酒検知できれば何でも良い」という入札はあまり現実的ではありませんよね。実施そんな入札はありません。
 
さて、世の中、キログラムとか、メートルとか「単位」は当たり前すぎて気にしませんが、じつは、「計量法」という法的な根拠があって成り立っていることが多いです。
そう、単位って、国でバラバラだとほんと面倒ですよね。マイルとかインチとか・・。換算すれば良いわけなのですが、問題は、「はかる」機器、これがバラバラだと、換算の問題じゃなくなるわけです。

機器が多い体重計がわかりやすいでしょうか。例えば、日本で体重60kgだったのに、翌日アメリカにいって体重計にのったら80kgだった。そんなことがあっていいはずはありません。なので、測定機器の大半は、国際標準に基づいてつくられた国内標準の考えを採用しているのが一般的です。 


そう、アルコール検知器も、です。
じつは、アルコール検知器には、各国の飲酒運転防止行政当局が採用しやすいように、国際的な標準規格があるのです。今回は、そんな話題です。

 

OIML

 

OIML=法定計量国際化機関 という国際的な組織があります。

International Organization of Legal Metrology の略 です。

とくに国家行政が決めるべき技術要件を、国際貿易障壁、消費者保護等の観点から整合を図っています。

 

(注 Chromeのページ翻訳のままです)



OIMLという機関にはさまざまな機器や技術の委員会があります。
 
アルコール検知器は、TC17/SC7 ” Breath Tester ” という委員グループが技術規格を取り仕切っています。

 

日本では、経済産業省の産業技術環境局 計量行政室や、日本計量機器工業連合会がOIML活動を行っています。
 

 

その名も  ” R126 Evidential breath analyzers ”


Rとは、Recommendationの略で、発行された技術規格文書の位置づけです。
強制的に各国が従う義務がなく、国際勧告、推奨、といったレベルでしょうか。126に特に意味はなく、他にも何十、何百もの規格文書がありますので、ただの連番だと思われます。

R126 Evidential Breath Analyzers が はじめて発行されたのは、1998年でした。
その後、随時、アップデートされています。
技術規格もテクノロジーや社会背景により変わってゆくのです。

1998年バージョン

2012年バージョン 

 


現在2021年12月バージョンが、国際的にみても最新のアルコール検知器の技術規格・検定制度ガイドラインです。
この文書を理解していれば、アルコール検知器のすべてがわかるといっても過言ではありません。

 


 


アルコール検知器は、「計量法」規制下にあるのか?

たまーに聞かれます。「アルコール検知器は、法定計量機器ではないのか?」
はい、当然の質問でございます。

日本には「計量法」という法律がありますよね。

 


ざっとこの法律を構造を目次レベルで見てみると・・
1章から8章まであります。

  • 第一章 総則
  • 第一条(目的)
  • 第二条(定義等)
  • 第二章 計量単位
  • 第三章 適正な計量の実施
  • 第四章 正確な特定計量器等の供給
  • 第五章 検定等
  • 第六章 計量証明の事業
  • 第七章 適正な計量管理
  • 第八章 計量器の校正等

となっています。

定義、単位、校正、検定、計量管理、基準器の校正、機関等・・・。 まさに、計量機器行政の根幹の法律ですね。

 


第二条によれば、法定計量対象とされる対象は


第二条 この法律において「計量」とは、次に掲げるもの(以下「物象の状態の量」という。)を計ることをいい、「計量単位」とは、計量の基準となるものをいう。

 長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度、角度、立体角、面積、体積、角速度、角加速度、速さ、加速度、周波数、回転速度、波数、密度、力、力のモーメント、圧力、応力、粘度、動粘度、仕事、工率、質量流量、流量、熱量、熱伝導率、比熱容量、エントロピー、電気量、電界の強さ、電圧、起電力、静電容量、磁界の強さ、起磁力、磁束密度、磁束、インダクタンス、電気抵抗、電気のコンダクタンス、インピーダンス、電力、無効電力、皮相電力、電力量、無効電力量、皮相電力量、電磁波の減衰量、電磁波の電力密度、放射強度、光束、輝度、照度、音響パワー、音圧レベル、振動加速度レベル、濃度、中性子放出率、放射能、吸収線量、吸収線量率、カーマ、カーマ率、照射線量、照射線量率、線量当量又は線量当量率
 繊度、比重その他の政令で定めるもの

 


・・・これをみると道路交通法施行令第43条で定めている、いわゆる酒気帯び基準、飲酒基準、体内アルコール量は・・・、質量、物質量に該当するのかな。


(アルコールの程度)
第四十四条の三 法第百十七条の二の二第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。


おそらく「血液量 mg/mL」や 「呼気 mg/l」は、法定計量単位ではないようです。

アルコール検知器を計量法扱いにするかしないかは、国によってまちまちで、どちらが正しいということはありません。



国土交通大臣と国家公安委員長が定めたアルコール検知器とは?


さて、2009年の国土交通省の告示と、2021年に公表された国家公安委員会の告示によれば、アルコール検知器の規格要件とは、


呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する 機器

 

とされています。呼気をはかるものであれば何でもよく、検知器の表示桁数も、精度も、検定制度にも何にも言及していません。

R126は、どちらかというと法定計量寄りの規格ですので、かなり広範囲にわたってアルコール検知器に関する定義がなされています。

第一分冊 計量要件と技術規格 48ページ

第二分冊 計量管理と性能試験 89ページ

第三分冊 性能試験報告書式  63ページ

200ページ!あります。

でも、そもそもの「アルコール」という単語の定義から、「呼気」、「表示」、「桁数」、「短期性能」「長期性能」「温度耐久」等、測定機器としてはあたりまえのことが定義され、かつ試験方法まで示されています。

 

国交省・公安委員会の検知器の規格3項目(2行!)
VS
R126 検知器規格 3分冊(計200ページ

 
むむむ。こ、この違いは・・・世界ではなかなか見られない事例なのではないでしょうか?

行政当局(警察庁、国交省)が法令文書レベルで定めるアルコール検知器の定義としては、「世界一カンタン」と言っても過言ではありません。




アルコール検知器協議会の検定制度

 


アルコール検知器の業界団体であるJ-BACでは、2016年頃からアルコール検知器の検定制度を定め、運営しています。これまでは、2017年バージョンでしたが、今年に入り、どうやら最新化されたようです。

検定制度 本編

2022年バージョンになりました。

技術規格 2022年バージョンになりました。

 

 

アルコール検知器協議会も、OIMLにおけるR126文書同様、時代にあわせ検定制度の文書をアップデートし続けているようです。

J-BACの検定文書は、計量法定機器向けのR126ほどのページ数はありませんが、きちんと国際的な技術動向をみながらも、民間企業が正しく使える、カジュアルかつ信頼性の高い技術規格として文書化されています。
当然、上記、2021年の改訂の中身もふまえて、最新化されています。

たとえば、干渉ガスの試験項目で比較しますと、R126では4種類ですがJ-BACでは3種類です。

R126の干渉ガス 試験項目






J-BAC JB10001-2022の干渉ガス 試験項目


J-BACの検定制度における技術規格は、日本の民需向け製品を主に想定しており、ベースはどちらかというと欧州規格を主につくられているようですが、R126も部分的に取り入れており、しっかりと国際的な整合性が図られています。

何はともあれ、国土交通省や国家公安委員会が定めるアルコール検知器の要件定義は、率直に言って、あってないレベルで、市場に流通しているアルコール検知器はほぼすべて当てはまるでしょう。

消費者・購入企業にとっては、告示に適合しているか否かは選択基準にはならない、ということになりましょう。


それにしても、何も基準のないアルコール検知器が市場にたくさんあるというのも、消費者にとっては本当にわかりづらいと思います。


あらためて、アルコール検知器の選択にあたっては、アルコール検知器協議会の検定制度の認定品をおすすめ致します。今回ご紹介したOIMLのR126の最新技術規格をはじめ、欧州規格の思想も取り入れているからでございます。


みなさま、R126およびアルコール検知器協議会の検定制度をあらためてお見知りおきください。


https://transport-safety.jp/archives/7416
https://transport-safety.jp/archives/8836