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別名、ロボット点呼検討会? IT点呼拡大検討会? リモート運行管理検討会? ~ 運行管理高度化検討会は何を目指しているか ~(前編)


  

そろそろ、来年令和4年度の国土交通省の予算の一次案(概算要求)が公表される季節になりました。

点呼を含む運行管理全般に関係するみなさまの注目は、ズバリ、ロボット点呼やIT点呼拡大かもしれません。

今回の記事は、4月から4ヶ月たち、いわゆるロボット点呼(自動点呼)や、IT点呼拡大について、国土交通省ではどんな検討・推進をしているのか、一度、整理してみましょう、という内容でございます。

その上で、令和4年度の自動車局予算がどうなるのかをウォッチしておくと、「ロボット点呼ってホントに解禁なのか」とか「セルフ点呼はいつからできるのか」等、よりリアルなスケジュールとして感じとれるのではないかと思います。

 

令和3年度の『運行管理(点呼)の高度化』予算


今年の予算をまず確認してみましょう。


 

 P6をご覧ください。




24百万。

ロボット点呼、IT点呼拡大はどうなっているのかな?  
これを具体的に知るためには、この2400万は、誰がいつどのように使っているのかな? を調べれば良いのです。


第1回「運行管理高度化検討会」(3.24)


今年3月24日、国土交通省は、「運行管理高度化検討会」を新たに立ち上げ、IT点呼(遠隔点呼)の対象拡大に向けた機器の性能要件や、自動点呼の導入に向けた点呼支援機器の認定制度等、運行管理の高度化に向けた制度に関する検討を行うため、以下の「有識者」を集め、検討会を発足させました。



有識者ということで、ICTやAIを活用した運行管理や、IT点呼等にさぞや高度な知見と専門性をお持ちの委員各位とお見受けいたします。


本検討会発足へ至る流れとしては、

1.「自動車運送事業の働き方改革の実現」
2.「自動車運送事業の交通事故対策」
3.「事業用自動車総合安全プラン2025」

という重要な施策がありました。
つまり、運行管理高度化検討回とは、そもそもは、「労働生産性」と「事故削減」という大義があります。

3月24日の検討会議事録が公開されています。




いくつか、気になるコメントがありまして。

 

○ IT 点呼において想定される課題の一つに、運転者のなりすましをはじめとする不正への対応が挙げられるが、誰がどのタイミングで不正をする可能性があるのか整理して、情報セキュリティ体制を決める必要がある。

 

ええっと、これは、過去10以上にわたるトラック業界でのIT点呼(推定、1万事業所)において、「ドライバーのなりすまし」がけっこう発生していた・している、という事実があるということなのでしょうか? 今頃、この議論?? なぜ数回にわたるIT点呼の要件緩和時に、問題にならなかったのでしょう?

それとも、「運行管理者(点呼執行者)」のなりすまし? 多発していた(している)可能性がある? そんな事案を検討会は認識したということ?

確かに、多くのIT点呼は、「他の営業所のドライバー」との点呼なので、普段交流がない、見知らぬ営業所の社員かどうか、確証が持てないということはあり得ます。ドライバーさんからしても、普段営業所で顔をあわせる運行管理者ではないので、違ったひとでも、気づきづらいかもしれません。(14年前のトラックIT点呼開始時からわかっていたことでは? 今頃この議論?? 衝撃。)

でも、ほとんどのIT点呼機器は、運転免許証を使って認証したり、ドライバーの写真が登録されていたり、「違うひとだ」と気づく仕組みはそれなりに強固だと思いますが・・。

それとも、これは無人点呼(ロボット的なものを活用したセルフ自動点呼)を想定して言っているのでしょうか?


○ 蓄積されていく点呼結果等を標準化してデジタルデータで記録すれば、監査ではそのデータを確認すれば済む等、点呼以外の業務の効率化にも資すると思料。


はい、その通りであります。点呼未実施ならば記録が残らず、点呼実施していれば、日時、時間、飲酒チェック、体調チェック、すべて記録が残りますからね。


○ IT 点呼の共通ルール策定に向けた課題を探索する際には、実証実験を通じて検証することは合理的。その際、まず優良事業者から検証を行い、その他の事業者に展開した際の課題を明確化することは理にかなっている。

今回のIT点呼拡大の狙いは、「すでに点呼実施率97%」の事業者が、「点呼実施率99.8%になる」、こういうところを目指してる?? (ホワイト企業は、より純白企業に)

それとも、「点呼実施率が7割」や「夜間点呼率4割」の事業者を、「点呼実施率98%」事業者へ引き上げる? (ブラック企業を、ホワイトへ近づける)

それとも、「より質の高いIT点呼」(より確実という名の美しい点呼)を、目指している?

点呼実施数の「業界総量増」なのか、点呼実施の「質」UPなのか、何ための高度化なのか、狙いをしっかり定めるべきと思います。


検討会の規約の第2条(目的)には

検討会は、自動車運送事業における輸送の安全確保の根幹を成す運行管理について、安全性の向上、労働環境の改善、人手不足の解消等に向けて


高度化は何のため? 
ここを見ると、IT点呼の拡大・普及は、「一定の質✕量」両方を狙っていると考えたいところ。いまのIT点呼よりも高度なIT点呼が定義されて、誰がどのような便益を得るのか、見ていきたいところ。


○ 不正への対応としては、新たな制度によってメリットを享受している事業者が不正を働いた際に、逆により厳格な制裁を科すという手法がある。

・・??? 

優良事業者が、より優良であるために高度化をして、不正には厳しく?

新たな制度のメリットを、どういう事業者が享受すると、路上がより安全になるだろうか? 


○ 点呼支援機器の認定制度の構築にあたっては、機器の汎用性やソフトアップデートを考慮すべきである。


確かに・・認定制度の「型式」は、もしかしたら「ソフトウェアVER」型式認定の概念が入る可能性があるかもしれませんね。


ともあれ、運行管理高度化検討会なるものが発足し、文字通り、高度化へ向けての作業が始まりました。

以下、3月24日で使われた検討会資料をいくつか抜粋します。


根底にあるのは、「運行管理の一元化」。

テーマは4つあります。

1.IT点呼(遠隔点呼)の対象拡大

2.始業時・就業時点呼における自動点呼の導入

3.運行指示書の一元化

4.運行時以外の運行管理業務の一元化


話題としては、IT点呼の対象拡大や、自動点呼(国土交通省は、まだロボット点呼という言い方を一度も公式ではしていませんが、報道レベルでは点呼ロボットと言われ始めています)が注目されていますが、じつは、大きな構想としては、

運行管理の一元化

がもっとも注目すべきキーワードと考えます。

本資料では、「営業所の枠を超えた実施に向けた検討」という部分。



IT点呼も、ロボット点呼も、運行管理の一元化、遠隔運行管理の一業務に過ぎないのです。

IT点呼はすでに14年もの歴史があり、ロボット点呼は、いまある技術で点呼を自動化するだけ。

むしろ重要なのは、「点呼以外の一元化」なのではないか思います。

だって、目指されているのは、「働き方改革・生産性」 ですから。

運行管理者やドライバーは、点呼だけが業務ではありません。他にもたくさんやるべきことがあり、それらもまた「ICT化」「一元化」の対象とならないと、生産性や安全性向上は、限定的になってしまいます。


話題としては、たとえば

 

このあたりに目が行きがちですが、むしろ

こっちの方が、より重要な気がします。

「営業所単位の運行管理 という時代の終わり」
「運行管理業務のセンター化というニューノーマル」

この1枚の絵は、そう言っていると思います。


自動点呼、始業、終業、どっちが先か?

資料によれば、ここのスケジュールは、明確です。

段階が2つ、あります。

フェーズⅠ:「終業時」点呼における自動点呼機器の導入

フェーズⅡ:「始業時」点呼における自動点呼機器の導入

確かに、「終業時」の自動化・セルフ点呼化のほうが、リスクが少ないですから、こっちが先なのは理解できます。また、心理面でも、「いきなり、運行前の自動化・無人化・セルフ化」はハードルが高いという判断もあるのでしょう。

なお、この国土交通省の資料には、ロボットふう、の絵はありますが、「ロボット点呼」という表現はあくまで使っていません。「自動点呼」及び「点呼支援機器」という言い方が一貫しています。
ちなみに本誌では意図的に「無人」「セルフ」を使っているのは、自動点呼という言葉が、運行可否観点で曖昧さを残していると感じるからです。より明確に運行可否をするヒトがいないという意味を強調するため、無人・セルフ、を多用しています。

国土交通省は、自動点呼とは実質、点呼執行者(ヒト)がいない点呼、運行可否を点呼執行者が行わない点呼を指しています。自動点呼(運行可否も)、と表現する必要があるかもしれません。

しかしながら、事業者側では、「半自動=自動」、「全自動=自動」の認識が入り乱れています。

なので、無人点呼や、セルフ点呼(誤解なくいえば、フルオートセルフ点呼。これを略しています)と本誌ではあえて言い換えています。

さらに、「点呼支援機器」という用語にも注目です。

同じく、これをロボット点呼機器と捉えてしまっているひともいれば、運行可否を伴わない、点呼フローの前工程だけを処理する機器、と理解しているひと、両方います。

文字通り点呼を「支援」する機器ですので、点呼を「代替」する機器ではないと理解しておく必要があります。


ほら、『点呼支援ロボット』という表現です。こんなにロボット的なのに・・。

ナブアシスト社の「Tenko de unibo」は、見事に、ロボット点呼機器を体現していると思いますが、残念ながら、道路運送法、貨物事業者運送事業法的には「支援機器」です。

つまり、セミオート・セミセルフ点呼機器、です。技術的には運行「可」にできる情報処理をしているのですが、単純に、点呼関連規則が追いついていないので、「点呼支援するロボット機器」に甘んじています。

さて、国土交通省、運行管理高度化検討会は、上記4つのテーマについて、どのような具体的なスケジュールを描いているのでしょうか。

 


スケジュールその1 IT点呼(遠隔点呼)拡大 

各テーマのスケジュールですが、予算を執行しなければなりませんので、以下のように、はっきり決まっています。

IT点呼については、

方向性は決まっています。
実質、IT点呼導入する資格のある事業者(所)を「優良事業者」としている制度を、「すべての事業者に解禁」という方向性。
しかし、「高度な機器を使用すること」を制度化するようです。

・・? 高度じゃないIT点呼機器と、高度な点呼機器、2つ存在するということ? ここはどう統合的に制度化されるのか、見所です。


さて、スケジュールですが、令和3年度の上半期で、実証実験第1弾、第2弾に着手。下期10月から、本格的な遠隔点呼を実施しながら、3月に制度化案を公表する予定のようです。


なお、3月の検討会発足の時点では、制度化「案」の公表なのか、「案」をとって公表するのか、不明です。令和4年の予算が公表されれば、はっきりしてくるかもしれません。

3月頃、どんなかたちで公表されるのでしょうか。こんなイメージ?

「案」がとれるのか? にみなさまもご注目ください。



スケジュールその2 自動点呼


前期:「終業時の、点呼支援機器」の実証実験

後期:実証実験の結果から、「点呼支援機器に係る認定制度」の検討

となっています。

年度末3月末頃に出てくるのが、
 ・終業時点呼支援機器の認定制度「案」
 ・始業時点呼支援誌機器の性能要件「案」
という、ひとつ、もしくは2つの要素をいれた文書かと思います。

もしくは、一気に、「案」を取るところまで行くかも知れません。

こんなイメージの文書でしょうか。

案がとれるかどうかは、追々、検討会の議事録をフォローしてゆけばはっきりしてくるでしょう。

 

スケジュールその3 運行指示書の一元化

運行指示書の一元化は、バス事業者を想定してのことでしょうか。資料では、トラックやタクシーではなく、長距離型のバスが事例で挙げられています。

 

運行指示書の一元化は、後期開始です。IT点呼や自動点呼が4月から開始であるのに対し、やや、遅めスタートです。

なお、制度化「案」までいかず、3月末「制度化検討」までのようです。


スケジュールその4 運行時以外の運行管理業務の一元化

検討会資料によれば、

「運転者への指導監督の一元化」
「運転者に適性診断を受診させること、の一元化」
「運転者の労務管理の一元化」
「運転者の健康管理の一元化

ここも目指しているようです。

現状は、事業申請自体が営業所ごと、運輸支局単位ごと、というたてつけですが、営業所届け出のない本社本部を運行管理主体とするのではなく、「主要な営業所をセンター化」や、「近隣の営業所同士で、業務を集約、分担」という現実路線で考えているようです。

 


実質、「運行管理者の兼務・兼任禁止」の改正まで踏み込むのでしょうか。

「『運行管理者業務の全てを他営業所で行うことができる』よう」


すでにIT点呼制度は、他営業所の運行管理者が補助者として、IT点呼業務限定で「兼務」を可能とした規則として実現しています。
この発想を、「点呼以外の業務」に広めようということかと思います。いや、補助者として遠隔から業務を行うのではなく、純粋な「兼務」をOKとする可能性も・・? 


「なお、本条の趣旨からして、運行管理者は他の営業所の運行管理者又は第3項に規定する補助者を兼務することはできない」(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)

「なお、運行管理者は、他の営業所の運行管理者又は本条第3項に規定する補助者を兼務することはできない」(旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について)

ここが 劇的に 変わるのかもしれません。

 


ここの一元化は、本年度は、ニーズ調査、検討段階までのようです。

 

IT点呼(遠隔点呼) 実証実験 16項目について


IT点呼(遠隔点呼)の実証実験にあたり、以下の16項目が検証されることが決まっています。


 

 

この16項目を踏まえながら実証実験を行う事業者は、以下7社です。


・トラック 2社
・高速バス 1社
・乗合バス 1社
・観光バス 1社
・タクシー 2社

どういう実証実験なのか、一社づつ見てみましょう。


高速バス遠隔点呼(JRバス関東株式会社)

 

JRバス関東様は、2つの遠隔点呼の実験が実施されています。

まず、こちらのは「営業所-営業所」間の遠隔点呼パターン。

  

 こちらは、営業所-待機所間の遠隔点呼パターン。


乗合バス遠隔点呼(広島電鉄株式会社)


こちらは、営業所-営業所間の遠隔点呼のパターン

 

 

観光バス遠隔点呼(東都観光バス株式会社)


 本社営業所-各営業所間の遠隔点呼パターン、1対5営業所でしょうか。

 

 

タクシー遠隔点呼 日本交通株式会社

営業所-営業所間の遠隔点呼パターン。


タクシー遠隔点呼(北九州第一交通株式会社)

営業所-営業所間の遠隔点呼パターン。

 

トラック遠隔点呼(IT点呼?グループ企業間点呼?)株式会社ボルテックスセイグン

別法人同士・子会社との遠隔点呼パターン。


トラック遠隔点呼(IT点呼?グループ企業間点呼?) 三菱電機ロジスティクス株式会社

 別法人子会社間同士の遠隔点呼パターン。

 

追加実施項目、評価方法について

国土交通省は、実証実験事業者の提案内容に対し、追加で確認指示をしているようです。

今後の検討会では、以下の検証事項について各事業者から報告があり、制度化の材料となる模様。

 

 

以上、3月24日の内容でした。

運行管理高度化検討会ですが、内容としては、実質、
「ロボット点呼検討会」
「セルフ点呼検討会」
「IT点呼拡大検討会」
「リモート運行管理検討会」
とも言うべき内容となっており、いよいよ運行管理者業務も「センター化・兼務・シェア」時代が来たのかな、という印象を強く持ちます。これにより、運輸行政の監査業務も、企業内の内部監査業務も、かなり楽になる(少ない人員で足りる)という姿も見えてきそうです。

出典 国土交通省 自動車局 運行管理高度化検討会
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000082.html 
令和2年度第1回「運行管理高度化検討会」(2021.3.24)
議事録/委員会名簿/規約/資料1/資料2/資料3 より抜粋

実証実験の経過は、後編 6月24日令和3年度第1回「運行管理高度化検討会」の記事へと続きます。