
守られるべき帰り道 ――子どもが車の中で安心して眠れる社会を
最近、ある自動車のCMが気になっています。
「家族のお出かけ」をテーマにしたもので、バックミラー越しに子どもの寝顔を確かめ、
運転する親が優しく微笑む——。
家族にとって「かけがえのない瞬間」が描かれ、見ている側にも自然と共感が生まれる映像です。

子を持つ親として、私自身も心温まる一方で、
同時に別の光景が目に浮かび、やりきれない感情に襲われます。
同じように、家族で出かけた帰り道。
同じように、子どもが車の中で眠っていた時間。
その瞬間を、飲酒運転の車に奪われてしまった人のことです。
1999年11月28日。
東名高速道路で、飲酒運転のトラックが一家の乗用車に追突しました。
温泉旅行からの帰り道。後部座席で眠っていた3歳と1歳の姉妹の命が奪われました。
2006年8月25日。
福岡・海の中道大橋で、飲酒運転の車に追突された乗用車が橋から転落。
カブトムシ採りの帰りだった一家の、3人の子どもが命を落としました。
このCMを、遺族の方が目にした時の感情を想像すると胸に重いものが残ります。
同じ幸福。同じ後部座席。でもその記憶の結末はまったく違う。
もちろん、車のCMになんの罪もありません。
むしろ誰もが大切にしたい「幸福の瞬間」をリアルに描いているからこそ、響くのかもしれません。
このCMが愛される社会と、飲酒事故で命を奪われる社会は、同じ社会です。
子どもが車の中で安心して眠れること。
それを大人が安心して見守れること。
それは、当たり前でなければならない幸福です。
数字が示す現実
「飲酒運転は減っている」という認識は、もはや正確ではありません。
警察庁の統計によれば、2025年の飲酒運転による死亡事故件数は125件。
2022年まで続いた減少傾向は、コロナ禍による会食の自粛が一因だった、
とも言われています。
行動制限が解除され、飲酒を伴う機会が戻った——
それだけで、命が奪われる件数が増えるという構造が、この国にはまだ残っているのです。
「防げる事故」と「防ぎにくい事故」
交通事故のすべてをゼロにすることは難しいといえます。
動くもの同士が道を共有している限り、不可抗力の事故はある。
しかし、飲酒運転は違います。
アルコールを体に入れたまま車に乗る、という行為は
「防ぎにくい事故」ではなく、「防げる事故」なのです。
私たちにできること
飲酒運転は防ぐことができます。
アルコールインターロックという技術があります。
飲酒教育を子どもの頃から伝えていくこともできます。
そして事業者であれば、点呼体制を技術で確実に構築することも、すでに可能です。
防ぐ方法は、すでにあるのです。
こうした何気ない幸福の風景に胸を痛める人をこれ以上生み出さないために。
バックミラーの向こうで子どもが安心して眠れる社会を、
私たちは守っていかなければなりません。
飲酒運転を根絶するための特設サイト
『アルコールインターロック.com』
