清水会長(日バス協)と川鍋会長(全国ハイタク連合会)が、2024年頭の辞でそれぞれ言及したこと。
2024年。日本の交通(地方交通、都市交通、観光移動)はどうなるのでしょう・・。
バス業界 2024年
明けましておめでとうございます。
昨年を振り返りますと、3年に及んだ新型コロナウイルスの感染がようやく終息に向かい、人々の動きも活発さを取り戻しました。全国各地で数多くの“4年ぶりの行事”が行われるなど、人々が笑顔で集う光景が戻ってきたことは大変喜ばしいことです。
こうした中、バスの需要は回復傾向にはあるものの、いまだコロナ前の水準までには戻っておりません。他方、バス運転者の不足により減便や路線廃止をせざるを得ないような事態が全国各地で発生しております。バス事業は、コロナ禍の3年間で生じた4000億円を超える巨額の赤字が重くのしかかり、燃料価格高騰も長期化して、極めて大きな負担を強いられています。また、今年4月からの働き方改革のための改善基準告示改正の施行で、運転者不足問題はさらに深刻化が見込まれ、バス事業は本当に危機的な状況に置かれています。
このような状況を踏まえ、昨年11月8日には前年に続いて「バス危機突破 総決起大会」を開催いたしました。全国からバス事業者の方々約250名が集結し、ご出席いただいた約100名の自民党国会議員の先生方へ、バス事業の危機的な状況を訴えて支援を求め、①「地域ブロック平均単価」を「実勢コスト」に、②人手不足対策、外国人バス運転者制度の実現、③EVバス補助金の大幅増額、④キャッシュレス化の加速、の4つの項目について決議を行いました。
1つ目のバス路線の維持に不可欠な赤字補填のための補助金については、その算定方式の見直しが行われ、補助金の拡充が図られることとなりました。このほか運賃改定の手続きも所要の見直し措置を講じていただきました。関係の皆様のご尽力に心より感謝申し上げる次第です。
今後は、これらの措置を活用しつつ、運賃改定を実施して待遇改善を進め、バス運転者の雇用環境を改善することにより、人手不足対策につなげていきたいと考えております。さらに、現在、検討が進められている外国人労働者をバス運転者として受け入れるための制度の創設についても、早期の実現を期待しております。
2030年に1万台の導入を目標に掲げているEVバスについては、政府が目指す2050年までのカーボンニュートラル実現のため、バス業界としても大きく貢献できるよう、国の補助金を大幅に増額していただいて、目標の達成に向けて取り組んでいきたいと考えております。
キャッシュレス化については、すでに海外では、現金でバスに乗ることができない地域が増えてきています。いまバスに搭載している運賃箱は価格が高額で、新札発行に伴う改修にも多額のコストを要します。また、小銭の取扱いは運転者の負担も大きく、営業所に集まった小銭を銀行で両替するにも手数料が生じます。こうしたコストを削減できるよう、国にはキャッシュレス化の旗振り役を果たしてほしいと思います。
輸送の安全の確保は交通機関の最大の使命です。インバウンド需要が急激に回復した貸切バスでは、本年4月から、デジタル運行記録計の使用義務付けのほか、アルコールチェック時の写真撮影や動画による点呼記録保存の義務付けなど、運行管理に関する規制が強化されます。今後、国には監査を強化していただき、ルールを守れない悪質な事業者を退出させていただきたいと考えております。加えて協会においても、貸切バス安全性評価認定制度について、運転者の技術向上や健康管理等に積極的に取り組む事業者を高く評価するなどの抜本的な見直しを行い、利用者の安心の向上に努めたいと考えております。
いまだコロナ前の水準までに戻らない輸送需要、深刻な運転者不足の問題、長引く燃料価格の高騰など、バスを取り巻く環境は大変厳しく、バス事業は危機的な状況に置かれています。しかしながら、こういう時にこそ会員事業者の力をより一層結集し、社会的信頼を損なうことのないよう、安全運行、事故防止を徹底し、安全・安心なバス輸送サービスの提供に努めて参ります。皆様のご理解、ご協力を重ねてお願い申し上げます。
タクシー業界の2024年。
http://www.taxi-japan.or.jp/content/?p=article&c=1993&a=6
より。
令和6年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
新型コロナウイルス感染症は、昨年5月8日から感染症法上の位置づけが2類から5類に移行し、ウィズコロナ、アフターコロナの時代を迎え、ようやく明るい兆しが差して来つつあります。
コロナ禍において、エッセンシャルサービスとして事業継続に努力されてきた事業者、乗務員の皆様に改めて敬意を表します。
5類への移行後は、インバウンドも含め「人」の動きが活発化しており、タクシーが国民生活を支える地域公共交通機関として、しっかり役割を果たしていくことが重要であると考えています。そのような中、昨年夏ごろより一部の国会議員等の発言からライドシェア解禁を求める議論が再び活発化するとともに、10月23日には、第212回臨時国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説において、「地域交通の担い手不足や、移動の足の不足といった、深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります。」旨が述べられました。
その後、デジタル行財政改革会議及び規制改革推進会議において、ライドシェア解禁を巡る議論がなされたところです。
12月15日まで5回にわたり開催された規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループにおいては、全タク連会長としてタクシー業界としての意見を訴えて参りました。
特に、ライドシェアは、事業主体が運行管理と車両整備管理について民事・刑事上の法的な最終責任を負わないばかりでなく、運転者を個人事業主と位置づけ、厳格化する労働関係法令の規制を逃れるとともに、安全確保の多大なコストを避けた結果、日本のタクシーの2.6倍の死亡事故と50倍の性的暴行が発生するなど課題が多く日本社会には相応しくないこと、ライドシェアありきではなくイコールフッティングが達成されるようにタクシー制度の規制改革がなされるべきであること、地域毎にデータに基づいた論理的な議論をしていただきたいことなどについて、強く主張してきたところです。12月20日開催「デジタル行財政改革会議」においては、国土交通省の検討結果を踏まえ、中間とりまとめが決定されました。
この中間とりまとめでは、タクシー・バス等のドライバーの確保、地域の自家用車・ドライバーの活用として、次の方策等への取組みが進められることとなりました。
- 深刻なタクシー・ドライバー不足を改善するため、ドライバーになり易い制度に改める。
- その具体策としては、
- 第二種免許取得に係る教習の一日当たりの技能教習の上限時間を延長、教習内容の見直しによる更なる効率化、2024年4月以降できる限り早期から教習期間を大幅に短縮。
- 道路運送法に基づく法定研修の期間要件(10日)の撤廃、研修の短縮化。
- タクシー業務適正化特別措置法に基づく地理試験の2023年度中の廃止。
- 外国人ドライバーの積極的な採用を可能とすべく2024年4月以降に行う第二種免許試験を20言語に多言語化
- 道路運送法第78条第2号に基づく従来の自家用有償旅客運送制度について、移動の足の確保に係る地方自治体の責務に照らして様々な障害があるとの地域の声を踏まえ、2023年内から使い易い制度へ大幅に改善する。
- 道路運送法第78条第3号に基づく制度として、都市部を含め、タクシーの配車アプリにより客観指標化されたデータに基づき、タクシーが不足する地域・時期・時間帯を特定した上で、タクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを2024年4月から提供する。また、この制度の創設に向け、ドライバーの働き方について、安全の確保を前提に、雇用契約に限らずに検討を進める。
- これらの方策について、できるものから早期に開始し、実施効果を検証するとともに、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024年6月に向けて議論を進めていく。
また、12月26日開催の「規制改革推進会議」で出された中間答申において、「移動の足の不足の解消」として、「タクシーの規制緩和(第二種免許に係る要件の緩和、地理試験の廃止、法定研修の日数要件の撤廃等)」「自家用自動車を用いた有償運送の制度改善」「タクシー事業者以外の者によるライドシェア事業のための法律制度についての議論」等が盛り込まれました。
全タク連としては、タクシー事業が今後とも地域を支える社会インフラであるとの認識の下、国民に対する安全・安心な輸送サービスを確保すべく、業界一致団結し、労働組合、個人タクシー業界、バス業界、自動車メーカー、消費者団体、「交通の安全と労働を考える市民会議」そして全国の地方自治体と緊密に連携し、タクシー業界として自力で取り組める全ての対策を、総力をもって推進していきます。そして6月を迎える前にいかに結果を出せるかが重要となります。
新型コロナウイルスによる急激な需要低下に伴う休車の特例措置については、国土交通省から、昨年11月14日付け事務連絡において今後の運用方針が示されたところであり、引き続き乗務員の人材確保に積極的に取り組み、同事務連絡に基づき着実に供給輸送力の回復に努めていただきますようお願いいたします。令和3年から続く燃料価格の高騰は、引き続きタクシー事業経営において大きなコスト増要因となっています。国の支援策として講じられた「タクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策事業」は、令和4年の第1期以降数次にわたり延長がなされ、コロナ禍で疲弊したタクシー事業者にとって大変有難い補助制度となっております。
全タク連では、昨年8月、国土交通大臣に「燃料価格激変緩和措置の延長に関する要望書」を提出し、当時9月末までとされていた同措置について10月以降の継続を強く要望した結果、11月2日閣議決定「デフレ完全脱却のための総合経済対策」において、本年4月末まで同措置を講ずることとされ、現在は第11期として令和5年10月、11月分の申請受付がなされているところです。
全タク連では、世界情勢等も踏まえ、本年5月以降においても燃料価格高騰対策に関する支援措置が継続されるよう要望して参ります。コロナ禍の間に全国のタクシー乗務員数は約2割減少しており、現在深刻な人手不足の問題に直面しています。乗務員の労働環境改善などによる採用強化は、タクシーが利用者の信頼を勝ち取り、生き残るための重要なアクションとなりますので、引き続き採用への積極的な取り組みをお願いします。
人材の確保については、令和4年度第2次補正予選において広報、セミナー、第二種免許費用等の補助が受けられたことから、全タク連では全国15か所で人材確保セミナー・労務説明会を開催しました。また、長年要望してきた第二種免許の取得要件の緩和については、一昨年5月13日に実現しました。
引き続き令和5年度補正予算においても、旅客運送事業者への人材確保・二種免許取得支援措置等が確保されたところであり、タクシー業界としては最大限に活用しつつ対策を進めて参ります。また、二種免許取得の外国語による受験、研修及び教習等の効率化について、国土交通省・警察庁等とも協議を重ねています。さらに、二種免許取得に不可欠な指定自動車教習所との協力関係を一層強化して参ります。
外国人ドライバーの在留資格については、現在、道路運送業が特定技能1号に追加されるように、全日本トラック協会、日本バス協会と連携して要望しており、引き続き取り組んで参ります。
加えて、国土交通省において実施されている「女性ドライバー応援企業認定制度」については、昨年12月時点で全国826事業所が認定を受けています。さらに、「働きやすい職場認証制度」についても一つ星、二つ星の認定を受ける企業が年々増加しています。これらの各種支援制度等を活用して、従業員の働きやすい施設・勤務形態を整備し、若年・女性乗務員を含む人材確保に一層積極的に取り組んでいただきますようお願いします。
一方、このような状況の中、労働時間については、法改正により本年4月1日から乗務員の時間外労働の上限を年960時間以内にしなければならないことから、引き続き時間外労働の削減に確実に取り組む必要があります。
また、この法改正にあわせて改善基準告示についても拘束時間や休息期間などが改正されたため、必要に応じて就業規則上の賃金制度や勤務シフトの改善など、種々の対応を行っていただきますようお願いします。
さらに、社会保険適用拡大のための法改正が行われており、本年10月からは従業員数が51人以上の企業に対して、一定条件以上の定時制乗務員(パート社員)を社会保険に加入させることとなります。該当するタクシー事業者では、社会保険料の負担が増えることになりますので、早期にその対応準備をお願いします。令和2年度以降の運賃改定の状況については、国土交通省の発表では昨年12月12日時点において、全国101運賃ブロック中99地域において運賃改定の申請があり、87地域において運賃改定が実施済みとなりました。
これらの運賃改定の実施により、各地域においては乗務員の労働条件改善とタクシーの「進化」による更なる利便性の向上を図り、なお一層の安心・安全なタクシーを実現されますようお願いします。特に、喫緊の課題である人材確保による供給輸送力の回復に向けて、運賃改定の効果を着実なものとしていただきますようお願いします。
また、運賃改定の実現に向けて、それぞれの地域においてご尽力いただきました国土交通省、地元運輸局をはじめ関係者の皆様にお礼申し上げます。特に、国土交通省におかれては、タクシー業界の要望を受け、一昨年12月に運賃改定の申請について所謂「3ヶ月ルール」を緩和するなど、スピーディーな審査を行っていただいたところであり、重ねてお礼申し上げます。今後もタクシーが社会から選ばれるモビリティとなるためには、当業界への各種支援や運賃改定に頼るばかりではなく、業界自らが「進化」を継続することで、最も安全で信頼できる移動手段と評価していただくことが欠かせません。
これまでも進めてきたUD車両、配車アプリ、キャッシュレス決済の導入等をはじめ、空気清浄機等の感染防止のための備品、タクシーデリバリーサービスの導入等、コロナ禍以降の取り組みも含め、利用者に向けたタクシーの「進化」を積極的に推進することが引き続き重要であると考えております。令和2年及び3年はコロナ禍の影響でタクシーを第1当事者とする交通事故は劇的に減少しましたが、コロナ明けの一昨年以降、タクシーの需要増加に伴い、タクシーが第一当事者となる交通事故件数についても増加に転じてしまいました。
タクシー事業の原点である国民に対する安全・安心な輸送サービスの提供に関しては、引き続き令和3年3月に国土交通省が策定した「事業用自動車総合安全プラン2025」を踏まえ、同年4月に全タク連において策定した「ハイタク事業における総合安全プラン2025」に基づき、関係者の総力を挙げて交通事故の削減に取り組んでまいります。
運行管理の高度化については、一昨年12月、乗務を終了した乗務員に対する点呼を自動で行うことができるようになったほか、業務前自動点呼についても現在実証が進められており、今年度中に制度化に向けた要件が取りまとめられる予定です。要望の多かった事業者間の遠隔点呼については、昨年11月から先行実施されており、運行管理を高度化することによって、安全性の向上はもちろんのこと、乗務員や運行管理者の労働環境の改善についても期待しているところです。国土交通省においては、一昨年3月に「アフターコロナに向けた地域交通の「リ・デザイン」有識者検討会」を立ち上げ、同年8月、同検討会は「タクシーは多様なニーズに応じたドアtoドアの輸送を提供することができる公共交通機関として重要な役割を担っており、今後も地域交通の担い手として期待をされている」との提言をとりまとめました。
この提言等を踏まえ、昨年9月、国土交通省では、関係省庁の連携の下、デジタルを活用しつつ、交通のリ・デザインと地域の社会的課題解決を一体的に推進するため、「デジタル田園都市国家構想実現会議」の下に「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」を立ち上げ、議論が進められております。
また、昨年2月、国交省において「ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会」が立ち上がり、昨年5月には、ラストワンマイル・モビリティに係る制度・運用の改善策として、営業所ごとのタクシー車両の最低車両台数の緩和、営業所等の施設設置要件の緩和などの12項目がとりまとめられました。順次制度化されており、タクシー業界としては最大限に活用しつつ、地域の足をしっかり確保して参ります。
さらに担い手確保として、特に若者や女性の雇用を促進するため、柔軟で多様な勤務形態、ロッカーや休憩施設の整備等を図って参りたいと考えています。
「GX」については、令和2年12月に政府において「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されているところであり、同成長戦略において「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現」と打ち出されております。2050年カーボンニュートラルを達成するため、創設されたグリーンイノベーション基金を活用し、GOを幹事企業としたプロジェクト、第一交通産業及び電脳交通を幹事企業としたプロジェクトを合わせて、全国で約850台のEV車両が導入されました。タクシー業界としても政府方針を踏まえ、引き続き他産業に先駆けてカーボンニュートラルを実現できるようEV車導入等に積極的に取り組んでいきたいと考えております。
令和4年4月、レベル4に相当する、運転者がいない状態での自動運転である特定自動運行の許可制度の創設等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律が成立したことを踏まえ、「自動運転車を用いた自動車運送事業における輸送の安全確保等に関する検討会」が国土交通省に設置されました。同検討会においては、全タク連からも技術環境委員長が出席し、自動運転車の安全確保について議論を進めて参りました。昨年1月同検討会は報告書を取りまとめ、本報告書を踏まえ国土交通省は、昨年3月31日 旅客自動車運送事業運輸規則の改正を行ったところです。全タク連では、今後とも自動運転車の動向について注視して参ります。このほか、改正タクシー特措法に係る取組の推進、UDタクシーの運送に関する研修の推進等、各種の課題について的確に対応して参りたいと考えています。
昨年は、ライドシェア解禁の動きに対して、私自身積極的に主要な報道機関等への説明、取材対応、会見などを行いました。これらの機会を通じて、日本のタクシーの安全・安心な理由、これを守るための各企業の日常の努力、タクシー事業に対する規制内容などについて、説明を重ねてまいりました。今年も引き続き、ライドシェア対応を含めタクシー事業に関する広報については、さらに一層の強化を図って参ります。最後になりますが、皆様の益々のご健勝とご発展を願い、全国一丸となって現在の苦境を共に乗り越えられるよう祈念申し上げ、年頭のご挨拶とします。
全日本トラック協会
(今日時点では 掲載されていないようです。災害発生により控えているのかもしれません)